『スティール・ボール・ラン(SBR)北米大陸横断レース』。このレースでは馬たちの走行距離は一日最大50〜70kmで、日々積み重なる疲労やトラブルのリスクを最小にする限界の走行距離だ。それ以上のペースで飛ばす競争相手はぼくらは無視する。その選手は必ずリタイアか死の終焉を迎えるからだ。スタートしてアリゾナ砂漠縦断の時は、午前11時をすぎると気温摂氏50度以上。馬が入れる木の下や岩陰を見つけたら、とにかくその場所に防虫対策の簡易ベッドを作ってひたすら寝た。馬は立って眠る。陽が傾きかけたら再出発で、月明かりがあれば進み、闇夜なら馬が岩や毒トゲで負傷するリスクをさけ、即刻キャンプの決断をする。ぼくらの馬は水を4日間飲まなくても大丈夫だった。夜のキャンプ時もそれなりに忙しい。馬の毛並みのブラッシングをみっちり数時間してやる。筋肉マッサージの意味もあるが、防虫や病気の危険回避のためだ。進行中道幅の視界が狭くなり、仮に道端に朽ちた木の十字架が何基かあったら要注意だ。過去に山賊が旅人虐殺したか、それに近い事故が起こった場所の可能性が高い襲撃に適した「地形」という事だ。敵はいないかもしれないが、まわり道するかまたは覚悟を決めて戦闘体勢をとってそこを通り抜けるしかない。でも、レース中もっとも神経と大量を使うのは「河」を渡る時だ。それが大きい河だろうと小さい河だろうと。水に入ると360度無防備状態になるし、ブヨや蚊の大群はいるし、もし水の中を泳いでいるマムシに馬が噛まれでもしたらその時点でアウトだからだ。ここまでの旅、いったい何本の「河」をぼくらは渡って来たのだろう・・・。そして、あといくつの「河」を渡るのだろう。ジャイロの淹れるイタリアン・コーヒーはこんな旅において格別の楽しみだ。コールタールみたいに真っ黒でドロドロで同じ量の砂糖を入れて飲む。これをダブルで飲むといままでの疲れが全部吹っ飛んで驚くほどの元気が体の芯からわいてくる。信じられないくらいいい香りで、さらに新しい旅に出向いて行こうという気持ちになる。まさに大地の恵みだ。ジャイロはたまにこれをヴァルキリー(馬)たちにぬるーくして飲ましている。とにかくこのレースは地形と天候を読み、自分と馬の肉体と精神のエネルギーを温存しながら進む旅だ。温存しない者は負ける。北緯45度を越えてからは雪と風が背後からと横方向から来る時だけ進行し、少しでも前方から吹きつける時は、しのげる小屋をみつけるか穴を掘って暖をおこしていつまでも待つ。二日だろうと三日だろうと焦って走り出すと待っているのは自滅だけだ。ギリギリまで・・・こうして・・・とにかく・・・全ての何もかもが限界に達した時!ようやくこのSTAGEの「ゴール」が見えてくる。

そして、どういう理由なのか?まったくなぜなのか?ぼくは本当に不思議なのだが・・・誰かが合図を送ってるのか?というくらいに偶然に!個々の能力に・・・走行差があるはずなのに!それなのに・・・この時!他の競争相手も一斉にゴールに向かって集結してくるッ!

お互い限界を乗り越えて来た残りギリギリのエネルギーをこの時点でふりしぼって使い果たすためにッ!

ジョジョの奇妙な冒険 第7部 スティール・ボール・ラン54話より引用

ジョジョの奇妙な冒険 第7部 スティール・ボール・ラン54話にて、6th.STAGEのゴールに近づいた際のジョニィのセリフ。SBRレースがどういう旅かを語っていくシーン。このコーヒーの描写がたまらん。

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